第2回尾道てのひら怪談大賞受賞作品『蝉脱』
作品タイトル: 蝉脱 筆名: 工房ナカムラ 子どものころ父の転勤で尾道に二年ほど住んでいた。あまり良い思い出はない。言葉が気取ってるとよく馬鹿にされたものだ。私が何か言うたびに指差して笑っていたあの子。指差す手の甲の赤いあざ。四十年たった今でも鮮明に覚えている。...
第2回尾道てのひら怪談審査結果発表!
第2回尾道てのひら怪談へたくさんのご応募をいただき誠にありがとうございました! 厳正な審査の結果、入賞作品が決定いたしましたのでここに発表いたします。入賞者のみなさま、おめでとうございます! 大賞 W075『蝉脱』工房ナカムラ 優秀賞(3点)...
第1回尾道てのひら怪談 総評&作品選評
総評 このたび開催した尾道てのひら怪談には、締め切りまでに239編(うち1編は文字数オーバーのため、残念ながら選外)もの応募をいただきました。篤く御礼申し上げます。 非常にレベルが高い作品が多く、嬉しい悲鳴をあげながら審査しました。...
第1回尾道てのひら怪談一般投票特別賞受賞作品『瓢箪島 ひとりぼっちの無人小屋』
作品タイトル: 瓢箪島 ひとりぼっちの無人小屋 筆名: 牧本 敏秀 瀬戸内海では、常識では説明できない怪奇現象がたびたび起きるという。私自身は怪奇現象的なものに遭遇したことはなかった。あの日が来なければの話しだが。 私の実家は瀬戸内の小島にあり、帰省した時は必ず我が家の漁船...
第1回尾道てのひら怪談林良司賞受賞作品『長江小学校の蛇』
作品タイトル: 長江小学校の蛇 筆名: 三浦 佐世子 うちが、通った小学校は、長江小学校よ。 昔は、尋常小学校とか、国民学校とかいろいろ呼び方があったんよ。 うちが入学したのは昭和十八年(一九四三年)その頃は、各学年とも三組も四組もあり、生徒の数が多く、ええ学校じゃ...
第1回尾道てのひら怪談原卓史賞受賞作品『みてた』
作品タイトル: みてた 筆名: 真弓 創 親戚のおばさんが言うには、私は幼い頃、尾道に住むこの親戚の家に来たことがあるという。 そう言われて、一気に記憶が甦った。今歩いているこの道のことも、うっすらと思い出せる。 そうそう、この石段の坂。この瓦葺きの家。見覚えがある。 ...
第1回尾道てのひら怪談小畑拓也賞受賞作品『どっち女』
作品タイトル: どっち女 筆名: 月下蝶々 僕は高校のクラスの友人からこんな話を耳にした。栗原西の川沿いの道「どっち女」が出る。夕暮れから夜の時間帯にそこを通る若い男性に、「どっち?」と聞くセーラー服の少女がいるらしい。最初はみんな「赤い紙、青い紙」的な怪談かと思って、「黄...
第1回尾道てのひら怪談光原百合賞受賞作品『ぽゆぽゆ、ばちゃ』
作品タイトル: ぽゆぽゆ、ばちゃ 筆名: シンオカコウ ヨーヨー釣りが苦手だ。 不器用で釣れないから、という意味ではない。地もとは夏場、商店街でよく露店が出る。焼きそばやたこ焼き、射的やくじびきなどお馴染みの屋台が並ぶ道を、大人も子供も練り歩くのが風物詩だ。 ...
第1回尾道てのひら怪談東雅夫賞受賞作品『くかくの光』
作品タイトル: くかくの光 筆名: 君島慧是 大学や就職のためにこの町を出なきゃいけない。そのまえになぜかやたらくねくねと、手を横にのべたくの字に曲げて、波と海鳥を真似る。しきりにそうして、制服のままで、綾香先輩は立っている。ポニーテールが海風に揺れる曲がり角、見ようによっ...
第1回尾道てのひら怪談佳作受賞作品『きみをかう』
作品タイトル: きみをかう 筆名: 小鳩平社員 大学卒業でこの家を引き払う際、買いたいと願い出てから十年間、他に売らず待っていてくれた大家さんには感謝の気持ちしかない。 十年後、約束の倍の金を用意して現れた私に、かつての大家さんは隣の畑込みで全てを譲ってくれた。 ...