第1回尾道てのひら怪談佳作受賞作品『陽光台行き』
作品タイトル: 陽光台行き 筆名: 林 加野 陽光台行きのバスに揺られていた時、ふと隣の彼女が何か呟いた。何と言ったのか、気にはなったが聞けなかった。夜の木々をくぐり登っていたバスが、ゆったりと止まり始めたからだ。そうして、座席のそこかしこにあるボタンが赤く灯った。 ...
第1回尾道てのひら怪談佳作受賞作品『夜店』
作品タイトル: 夜店 筆名: 御手洗 おやいらっしゃい。あぁ、観光で来たん。夜店も初めてかい。いろいろ見ていきんさいよ。そんな風に、魚の干物を売る露店のおばさんが声をかけてくれた。 尾道の商店街で夜店をやっていると聞いて、冷やかしに行ってみた。アーケードは明るく、露店が...
第1回尾道てのひら怪談佳作受賞作品『類似』
作品タイトル: 類似 筆名: 鳥原 和真 結婚を予定する彼を連れて尾道の実家へ帰ると、庭が掘り返され、舟があった。 大きな木製の舟である。旧家だと庭に舟も埋まるんだね、と彼はのん気に笑う。 父が晩酌で広げたのは、古い証明書だ。倉で先日発見したというのに磯の生臭さがこ...
第1回尾道てのひら怪談佳作受賞作品『花火』
作品タイトル: 花火 筆名: 山口 和史 その日がちょうど花火大会の当日と知り、会場へ足を運んだが、立錐の余地もない。 少し離れた場所に、展望台がある公園があると雑貨屋の婆さんに聞いた私は足を伸ばしてみることにした。 ...
第1回尾道てのひら怪談優秀賞受賞作品『廃屋の画家』
作品タイトル: 廃屋の画家 筆名: 甘露煮 地元を離れ、早半年以上。この土地での暮らしにも慣れた。行動範囲が広がったこともあり、行ったことのない場所に行こうと思い立った。存在だけ知っていた学校運営の美術館。特別行きたかったわけではない。ただ、まだ見ぬ場所への好奇心が私を動か...
第1回尾道てのひら怪談優秀賞受賞作品『走神』
作品タイトル: 走神 筆名: 剣先あおり 中学・高校と過ごした尾道は坂の多い町として有名だが、地元にとっては道は狭いし、階段も多くて結構つらい。毎日坂や階段を上り下りすることで足腰も鍛えられていいですね、と言われたりもするが、平坦な道のほうが楽でいいに決まっている。 ...
第1回尾道てのひら怪談優秀賞受賞作品『隙魔』
作品タイトル: 隙魔 筆名: でこぽん 人通りの途絶えた時に、物と物との間、建物と建物の間などの隙間から現れる怪異の総称。主な現象として、少しだけ開いた扉やたんすの間から視線を感じる、壁と壁の間から声が聞こえる、といったものが挙げられ、姿はさまざま。また、暗闇に何かがいる気...
第1回尾道てのひら怪談大賞受賞作品『延命門』
作品タイトル: 延命門 筆名: 籠 三蔵 尾道七佛めぐりの起点である持光寺は陶子のお気に入りの場所で、山陽本線の踏切を超えた急勾配の坂道を登り切ると、延命門と呼ばれる三十六枚の花崗岩で出来た独特の山門が聳えている。その向こう側の紫陽花の咲き乱れる花壇の前で、彼女は私を待って...
第1回尾道てのひら怪談審査結果発表!
昨日は、尾道てのひら怪談トークイベントにお越し下さりありがとうございました! トークイベントの様子は後ほど記事にさせていただくとして、まずはみなさま気になってらっしゃいます審査結果発表をご報告いたします! 大賞 W082『延命門』籠 三蔵 優秀賞(3点)...