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第2回尾道てのひら怪談光原百合賞受賞作品『噂話』

作品タイトル: 噂話  

筆名: 河原清美

 ねぇ、こんな話知ってる?  そんな一言から始まった会話、塾の友人たちから聞いた噂話を思い出しながら帰路につく。  夜中に一人で長江通りを歩いていると見たことのない神社が現れるらしい。  その神社には彼岸花の好きな守り神がいて、年中真っ赤な彼岸花が狂い咲いているらしい。  その噂がどうしても気になった私は、塾の帰り道に少しだけ寄り道する。  しかし、長江通りの端まで歩いてみたが、暗いだけでいつも通りの道だった。がっかりして家に帰ろうとした時、どこからか微かに歌声が聞こえた。振り返ると先ほどまではなかったはずの道ができていて、赤い鳥居が見えた。誘われるように入っていく。鳥居を潜りあたりを見渡していたら声をかけられた。 「お客様なんて珍しいわね、何か御用かしら。」  驚愕の連続で、鈴のような硬質で綺麗な声だな、なんて見当違いなことが頭に浮かんだ。 「用っていうか、この神社の話を聞いて本当かなって気になって。」 「そうだったの、特に面白いものはないけどよかったらゆっくりしていってね。」  彼女は、ふわりと微笑んで神社へと入っていった。私は神社を見て回ることにした。  その時に、他の彼岸花より真っ赤で美しい一輪が目に止まった。その一輪をどうしても持ち帰りたくて、折ってしまった。 「ねぇ、何しているの?」  いつの間にか彼女が後ろにいた。さっきまでの声と違い底冷えするような声、何の感情もともさない氷のような瞳に耐えられず、思わず神社から走って逃げ出した。どのようにして帰ったのかわからないけど、なんとか家についた。飛び込むように自室に入る。  安堵のため息をついたとき、右腕に針が刺さったような痛みが走った。手首に彼岸花のような真っ赤な痣ができていた。  「次は、許さないからね。」  どこからか彼女の鈴のような声が聞こえた。


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